生きづらい人が読んだ面白本

面白かった本のレビューです。ちょっとクセのある本が多いかもです。

『カルト宗教信じてました。「エホバの証人2世」の私が25年間の信仰を捨てた理由』byたもさん

(※ネタバレありです)

◎はじめに

たまたま大塚の本屋さんで出会った漫画。
お店の一押し商品のようで目立つように展示されていた。

私自身が、子供の時に母親の信仰に巻き込まれ強要されて嫌な思いをしたので、大人になった今でも宗教アレルギーの気がある。
一方で、なぜ人間はこんなにも宗教に引き寄せられるのだろう?という根本的な疑問があり、ついつい宗教関係の本に手を伸ばしてしまう。

この本屋には試し読みの小冊子があったのでさっそく読んでみた。
それが面白かったので購入した。

◎あらすじ

主人公は、ごく普通の地方の家庭で生をうけた。
両親と姉妹弟の6人家族。
4人の子供を育児中の母親がある日宗教にはまった。

そして夫婦げんかが始まり、母親は家庭で孤立しはじめる。
エホバの証人の信者のアドバイスで、母親は家族を一人、エホバの証人に引き込む計画を立てた。
それが小学5年生の作者だった。
4人姉妹弟の中でも「比較的おとなしくて断れなさそうな」性格が、ターゲットにうってつけだったようだ。

それから作者は、エホバの証人の子供から入門書で少しずつ教育を受け、集会に出席し、周囲から孤立するようになり、ときどき「なんかいってること変だな」と思いながらも、ますます宗教にのめりこんでいくという悪循環に入りこんだ。

新たな展開があったのは20歳の時のこと。
エホバの証人の異端児カンちゃんと勉強会で出会い、交際を申し込まれた。

エホバの証人では恋愛はご法度なので、二人は周囲から引き裂かれた。
でもそれにもめげずに5年後に正式に結婚した。

最初の子供を流産で亡くし、その後男の子を授かった。
赤ちゃんは信仰心が吹っ飛ぶほどの可愛さで、作者は子育てにのめりこんだ。

ところが息子が4歳の時に肺動脈性肺高血圧症という難病にかかり、突然入院することになった。
エホバの証人は輸血を拒否する宗教ということで有名だが、作者は息子の治療・手術の過程で輸血・血液製剤を使用する同意書にサインするよう医者から求められた。

作者は悩んだすえ来世の楽園よりも今のわが子の命を優先し、同意書にサインをした。

息子は奇跡的に難病が治り、家族3人の幸せな生活がよみがえった。

しかし退院から数か月して息子がYoutubeで変な動画を見つけた。
それはエホバの証人のスキャンダルを告発する内容だった。
作者は動画の裏をとるためにエホバの証人に関する本を読み漁り、教義が嘘まみれであったことを知った。
夫に相談すると、自分も「前からおかしいと思ってた」ということで、もう二人は集会に行かないと決めた。

同じく信者である双方の母親にもその旨説明し、ひと波乱ふた波乱をへて、作者は昔からしたいと思っていた漫画を描く生活にいたった。

奇跡のようなハッピーエンドだ。

◎感想

うちの母親は私が小学生の頃は実践倫理の朝起会に行っていた。
私が大きくなった頃には立正佼成会にはまっていた。
そのまま現在にいたる。

母は地方の農家の2人姉妹の次女で公務員の父と20歳で結婚した。
漫画の家庭と同じように父は仕事専門で子育ては母親まかせ。
たぶんうちの母親も「純粋すぎる人」だったのだろう。
プラス、かなりの完ぺき主義者。
子育て教本に載っているような完ぺきな子育てをする完ぺきな母であり、妻でありたいと望んでいた(そういうタイトルの本が家にあった)。
世間知らずなので、世の中に完ぺきなモノ・完ぺきな人など存在しないということを知らなかったのだ。
その理想と現実のギャップの中でもがき苦しみながら、集会で仲間の信者から「認められて 褒められて そこに居場所を見い出し」はまっていったのだろう。
漫画中の「よく進歩されて素晴らしいわ!」「励まされるわぁ~」という少し違和感のある口調などは母を取り巻く世界の言葉にとてもよく似ている。
『カルト宗教のノリというのは似通っているものなのだな~』と、この漫画を読んで思った。

でもたぶんその世界でしか生きられない人もいるのだろうし、宗教は永遠になくならないだろうし・・・。

皆それぞれベストを模索しながら一生を懸命に生きるしかないんだろう。